今回ご紹介するのは、外部階段とアプローチ部分のタイル補修・色調調整の事例です。
工事会社様より、お施主様のご要望として「過去の補修によってタイルの色が部分ごとに異なり、全体としてちぐはぐな印象になってしまっている箇所を直したい」というご相談をいただきました。完全な貼り替えではなく、今あるタイルを活かしながら、補修部分だけを自然になじませたいというお施主様のご希望を受け、タイルの色づくり・開発段階から関わらせていただきました。
最初にお送りいただいたお写真から、以前の補修で使用されたタイルが元のタイルとは異なる商品だったことにより、色味の差がはっきりと出てしまい、施工後に違和感を感じられている様子がうかがえました。

完全な貼り替えではなく、今あるタイルを活かしながら、補修部分だけを自然になじませたいというお施主様のご希望を受け、タイルの色づくり・開発段階から関わらせていただきました。
■ 既存タイル補修で難しいこと
外部階段は、
- 直線部と曲がり部が混在している
- 視線が自然と集まりやすい
- 光の当たり方によって色の見え方が変わる
といった条件が重なり、わずかな色差や質感の違いが目立ちやすい場所です。さらに今回は、過去の補修による色ずれがすでに存在しており、「新しいタイルをきれいにつくる」のではなく、全体の印象を整えることが求められていました。
また、階段は角度があるため、平場に比べて視界に入ってくる情報量が多く、色や質感の違いがより強く印象に残りやすい場所でもあります。

■ 実物タイルでの確認からスタート
色調検討にあたっては、写真や数値だけで判断せず、一部、実物の既存タイルを工事会社様からお送りいただき、色開発をスタートしました。
また、開発したタイルサンプルを現地へお送りし、実際に目で見て問題がないかを確認していただいています。現場では、日向と日陰、既存タイルとの並び、階段の立体感によって印象が大きく変わります。
机上での判断だけに頼らず、実物を並べて確認する工程を挟むことで、施工後の「思っていた色と違う」という状況にならないようお客様にご確認いただきました。
開発のポイント|斑点技法による質感再現
今回の補修タイル開発では、
単色で既存色に寄せるのではなく、 「斑点(はんてん)」という技法を用いています。
斑点技法は、
- 色の濃淡を細かく点在させる
- 経年による自然なムラ感
- 立体的な凹凸の表情を再現できる
という技法です。新しいタイル特有の「のっぺり感」を抑え、
既存タイルが持つ時間の積み重なりに近づけることで、補修部分だけが浮かない質感を目指しました。

斑点技法により、劣化のようすや凹凸感、色味も近づけることができました。
■曲がり階段を含めた施工
施工にあたっては、直線部だけでなく曲がり階段部分も含め、
- 見上げたときの連続性
- 目地ラインの流れ
- 色の切り替わりが視線を止めないか といった点を意識しながら納めています。
階段・踊り場・アプローチをひとつの連続した外部空間として捉え、部分補修でありながら、全体が整う仕上がりを目指しました。また、今回の曲がり階段部分は、既存のタレタイルとサイズが異なっていたため、焼き上げ後に2mmカットし、既存形状になじむ寸法に調整しています。
■ 色決定後の施釉の工夫(タレ階段)
色決定後、曲がり階段(タレ階段)用の施釉テストとして、以下の2種類を制作しました。

品番①釉薬を上からそのままかけた仕様。全体に釉薬の流れ(垂れ)があり、斑点の表情が比較的はっきり出ています。品番②釉薬の粘性を上げ、垂れを抑えた仕様。斑点がやや小さくなり、光沢も控えめな印象です。
どちらも既存タイルとの相性を見ていただき、①または②のいずれかを選定いただく形としました。机上で判断するのではなく、実際に並べて見たときの印象を重視しながら進めた工程です。
私たちTILEmadeにとって、タレ階段の補修は初めてのご相談でした。前例がない分、不安な点は実際に製作を行い、お客様と一つひとつ確認しながら、最適なかたちを見つけていくことができました。
■ 仕上がり
補修後は、既存部分と自然につながる外部階段・アプローチとなりました。以前のような明確な色違いではなくなり、お施主様にもご安心いただけたようです。





■ TILEmadeが大切にしていること
私たちは、タイル補修を 「足りない部分を埋める作業」ではなく、空間全体を整える仕事だと考えています。新しくすることよりも、劣化も含め、今あるものにどう寄り添うか。そんな視点から、 これからも素材づくりと向き合っていきたいと思います。
TILEmadeでは、既存タイルの状態や経年の表情を丁寧に読み取りながら、色味や質感、素材感のバランスを調整し、空間全体として自然に感じられる補修を目指しています。既存タイルの補修や色調調整、経年による見え方の変化に配慮した素材づくりについても、状況に応じたご提案が可能です。
ご用命がございましたら、現状のお写真やタイルの一部をお送りいただくところからでも構いません。お気軽にご相談ください。
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