愛知・岐阜を中心にデザイン性の高い住まいを手がけるハウスメーカー「ラ・カーサ」様より、特注タイル開発のご相談をいただきました。
ラ・カーサ様が大切にされているのは、「住み手の個性を表現しながら、街並みとも調和する建築」という考え方です。注文住宅は個人のための空間でありながら、地域の中に存在する“公共性”も持ちます。そのため、建物の形状や素材一つひとつに、周囲との関係性を踏まえた丁寧な設計が求められています。今回のご依頼は、そうした思想を反映したものでした。
これから住宅を建てるお客様への提案内容に、素材からこだわった地場のタイルを使用してみたい、と声がけいただき、新しく建てられるコンセプトハウスの施工へ向けた特注タイルのプロジェクトがはじまりました。
まず行ったのは、ラ・カーサ様が思い描く世界観と、TILEmadeが表現できる素材の方向性を揃えることでした。ラ・カーサ様の担当者・デザイナーに工場へお越しいただき、釉薬づくりや焼成の工程を見ていただきました。現場を見ながら、「住まいづくりで大切にしたいこと」「素材づくりで重視していること」といったテーマを共有し、今回のタイルの方向性を整理していきました。この対話が、プロジェクトの軸となっています。
■ デザイナーと行った実践的な検討
打ち合わせの中での具体的な検討項目は、
- 形状
- 面状（テクスチャ）
- 貼り板
- 釉薬のムラ感
- 製法上の再現性 です。
とくに、今回の面白さは形状の組み合わせにある、ということで、完全特注ではなく型がすでにあるものの中から３形状を選び、組み合わせることで、世界観を表現する方向に。
検討の結果、以下の３つの形状を組み合わせる構成が採用されました。
- 22mm × 97mm
- 22mm角
- 47mm角
形状が異なることで光の入り方や影の落ち方が変わり、設計意図でもある「奥行きのある表情」が自然に生まれます。
また、サンプルを並べて検討を進める中で開発の方向性が決まり、「土の質感をほどよく残すタイル」を作ることになりました。ラ・カーサさんがすでにモデルハウスの住宅で使用する予定の生地などをお持ちいただき、生地のイメージに近いタイル開発を行っていきました。
- 自然光で柔らかい陰影が生まれる
- 手触りに素材感がある
- 空間に馴染みやすい
- 過度に主張しない
住空間に長く置かれても違和感のない、落ち着いた表情を目指しました。
色ムラについては、３色で濃淡を作る案と、釉薬で自然なムラを出す案、どちらが良いかという話し合いがありました。タイルの色ムラには大きく２つの手法があります。
A｜濃・中・淡の３色で構成する方法
- 施工後の表情が安定する
- 貼り方の工夫もしやすい
B｜釉薬の濃淡でムラをつくる方法
- 自然で深みのあるムラになる
- 焼成の変化が表情として現れる
- 再現性の調整が必要
色開発と同時にむらの検討も行い、最後は一枚の中でむらを作る方向に。色開発したサンプルを並べ、現場で検証いただきました。
■ 仕上がりと空間での見え方
完成したタイルは、ラ・カーサ様の空間で次のような役割を果たしています。
- ３形状の組み合わせが奥行きを演出
- 釉薬ムラが柔らかい陰影を生む
“住まい手の個性を受け止めつつ、街並みにも馴染む素材”という、ラ・カーサ様の思想を、タイルという形で実現した事例となりました。ラ・カーサ様の家づくりの哲学と、TILEmadeの素材づくりの姿勢が合わさり、今回の特注タイルが形になりました。
濃淡の表情や土の質感にこだわり、素材そのものの揺らぎを楽しめる特注タイルが生まれました。
ラ・カーサ様のコンセプトハウスでは、このタイルがテーブルや水回りに設えられ、光を受けながらやわらかな陰影と奥行きを空間にもたらしています。
均一に整えすぎない色ムラと、ほんのり残した土の表情が、暖かな場に自然と馴染む。住まい手の暮らしを受け止めながら、街並みにも調和する素材。その考え方を、タイルというかたちで体現した一場面です。
この特注タイルは、ラ・カーサ様のコンセプトハウスにて実際にご覧いただけます。
ウェブサイトより見学申し込みいただけます。
https://www.lacasa.co.jp/event/detail/33909/
これから住宅をご検討されている方は、ぜひ現地で、空間の中でのタイルの表情や質感を体感してみてください。
■ 今回のプロジェクトは動画にも
今回の特注タイルをつくるにあたり、工場での検討風景やサンプル比較、実際の焼き上がったタイルの様子など、開発のプロセスをまとめた動画を制作いただきました。
タイルを作っている私たちのまちや、タイルが形になるまでの流れ、ラ・カーサ様との対話の様子を、より立体的に感じていただける内容になっています。
https://youtu.be/aTRxntpOGgo?si=6-1DmEpbnp02wT_N
今回の特注タイル開発は、素材づくりの現場と設計の視点が行き交いながら、一つのかたちへと整理されていくプロセスでした。ラ・カーサ様の家づくりの思想に対し、TILEmadeとして何を提供できるのかを考え、形にしていったプロジェクトでもあります。
これからも、住まい手と街に寄り添う素材づくりを大切にしながら、ものづくりの現場から新しい提案を届けていきたいと思います。
地域の魅力をタイルで伝えるお手伝いを、これからも続けていきたいと思います。
その土地ならではの想いや風景に寄り添い、より良い形づくりに関わっていければ幸いです。
タイルに関するご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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